IP-PBXのIPはIntenet Protocol、つまりネットワーク間でデータをやりとりするための手順や取り決めである。IPに対応したネットワークはIPネットワークと呼ばれていて、インターネットもその1つだ。そして、PBXはPrivate Branch eXchangeのことで、日本語直訳すると構内交換機となる。つまり、IP-PBXは、IPネットワーク上でIP電話による内線電話網を構築するPBXのことになる。
では、PBXとIP-PBXとでは、何が違うのか?…と言うより、PBXからIP-PBXに変わり、付加価値はあるの?という疑問をお持ちになるかもしれない。
…もちろんある。コスト面の大削減は当然のこと、従来の便利なPBX機能の他に、IP電話ならではの特徴というものが数多く存在するのだ。
1. まずIP-PBXであれば、IP電話と接続する規格が決まっているので、その規格に合っていれば、原則メーカーに縛られず自由に組み合わせることができる。
このことにより、前回IP-PBXについて ーPBXとはで述べた、PBXのデメリット面である導入時や移設・増設・変更時のメーカーの囲い込みについてはクリアになる。~有名な事例が、秋田県の大館市にある。2008年、大館市役所の電話システム約500端末をIP-PBXに入れ替えたという事例がある。見積り2億円の電話システムを、職員有志が協力して820万円で導入したことで話題となった。庁舎間の連絡を公衆電話網からIP電話に切り替えたことによるコスト削減は、年間約400万円になり、稼働してから現在も大館市のIP電話網は大概して安定稼働しているという。ここで言えるのは、IP-PBXにすることで大幅なコストダウンを図ることができるということと、実用性の面でも耐えうるであろうということだ。
2. 次に、国内の離れた拠点に限らず、海外拠点も内線化できるということ。
IP電話を使うと内線通話できる範囲は同じオフィスや敷地内に限定されない。すなわち、国内の離れた拠点をIP-PBXで内線化することができる。
それだけではない、海外の拠点も内線化することができる。市外電話料金や国際電話料金を一切払うことなくワールドワイドに拠点間を無料で通話できるのは大変経済的だ。
当然ながら、内線電話がオフィスにある必要はなく、自宅にIP電話を設置し内線化して、自宅で会社宛に掛かってきた電話を受けることもできる。さらに、オフィスを持たないで、自宅をオフィスにして全国に散らばった在宅ワーカーをIP電話で結んでバーチャルオフィスを実現できる。
たとえば、本社が東京、支社が大阪、名古屋、そして駐在オフィスが北京とロサンゼルスにあるような会社の場合でも、全て内線化することで社内間の通話には一切料金が発生しない。また、iPhone/AndroidなどのスマートフォンではIP電話アプリ(CSipSimpleなどのSipフォンアプリケーションで、大概のものはフリー)を使うと、スマートフォンを内線電話として使うことができる。
内線化するのは自社に限定する必要もない。頻繁に通話する会社間をIP-PBXで内線化することもできる。これも電話料金は無料で通話できる。
3. ワールドワイドにビジネスサポートが可能。
世界中各国の電話番号をIP-PBXに登録して、それらに掛かってきた電話を、それぞれの拠点に転送することができる。例えば、東京03、大阪06、北京010、ロサンゼルス213と、4つの各国各地域電話番号(DID)を取得してIP-PBXに収納する。これにより、ワールドワイドに電話サポートが実現できるのである。インターネットで世界各国向けに製品を販売している場合、各国に電話サポートの窓口を置くことは費用的に大変であるが、物理的に各国に電話を置かずに、IP-PBXにて一箇所に電話を転送してもらって電話サポートすることができる。また、これらのサービスでは、電話料金が非常に安いというメリットもある。
また、スマートフォンで固定電話や他社携帯に電話を掛けると通話料金が高いが、上の2.で述べた、スマートフォンのIP電話アプリで内線化してしまっているので、携帯電話でありながら安価な一般回線の通話料金で電話をかけることができる。スマートフォンの番号は受信専用にして、電話するときにこれらのサービスを使うことで携帯電話の通話費用を下げることができる。まさにIP電話ならではのサービスである。こうなると携帯電話会社も従来のビジネスモデルではやっていけず、ビジネスがどんどん変わっていくと思われる。
(続)
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